目指そう8020、防ごうオーラルフレイル

8020とは「80歳になっても20本以上の歯を残そう」という運動です。既に20本以上の歯がないからといって諦めてはいけません。これから努力して1本でも多くの歯を残すために、8020を目指して、状態・年齢別にできることを追ってみましょう!

妊産婦

お母さんの歯の健康が生まれてくる赤ちゃんの歯の健康にもつながりますから、特に気をつけましょう。妊娠がわかったら、母子健康手帳を持って「かかりつけの歯科医院」を受診しましょう。

妊産婦は女性ホルモン、唾液の酸性度、口腔常在菌の変化等のため、口の中が汚れて、むし歯や歯周病にかかりやすくなってしまいます。また、つわりや体調の変化から食生活が変わりやすくもなります。
妊娠中にすでに子供の歯の形成や石灰化が始まります。お母さんの食生活や栄養、喫煙、飲酒などのライフスタイルが生まれてくる子供の歯の健康に大きく影響しますので、気をつけてください。

妊娠初期(2~4ヶ月)
乳歯の歯胚(歯の芽)は約7週目から出来始めます。永久歯の歯胚は、3ヶ月頃から出来始めます。
強い歯をつくるため、栄養のバランスに気をつけましょう。
妊娠中期(5~7ヶ月)
早い人は赤ちゃんの胎動を感じ始め、乳歯は4ヶ月の後半から歯の石灰化が始まります。
お母さんは食欲が出てきますが、甘いものや加工食品を食べ過ぎないようにしましょう。貧血になりやすいので、ひじきや切干大根等の鉄分が多い食品をとるようにしましょう。
赤ちゃんがどんどん大きくなってくる時期です。一日に何度も食事をするひとは、その都度お口の中を掃除しましょう。

通常は安定期と言われる5~7ヶ月位が歯の治療に適している時期で、投薬やレントゲン等ほとんどの治療が可能と言われています。
安定期に入ったら、治療する歯がある場合は、歯科医師等に相談して、お母さんの歯の治療をしておきましょう。妊娠を理由に必要な治療を怠ると、むし歯や歯周病が悪化する場合があります。歯科医師と相談して治療計画を立てることも大切です。
妊娠後期(8~10ヶ月)
顎の中で永久歯の歯胚がほぼ揃います。
母乳で育てる準備をしましょう(これは子供がおっぱいをしっかり吸うことによって、噛む力の発育を助けるため、母乳で育てた方がいいためです)。

ワンポイントアドバイス

吐き気の強いときにはこんな対策を試してみましょう

  • 歯磨き剤をあまりつけないで磨く
  • 小さめの歯ブラシを使う
  • 洗口剤(デンタルリンス)等を使う

1〜2歳

乳幼児健診(1歳6か月児健康診査)に備えて、大人が率先して歯磨きしましょう。

12本~16本の歯が生え揃う時期です。
歯と歯の間、歯と歯肉の境目、奥歯の噛み合わせをよく磨くことが大事です。

保護者の目で確かめながら「仕上げ磨き」をしてあげることが重要です。大人の真似をする時期でもあるので、大人が率先して歯磨きをしましょう。

また、この頃になればブクブクうがいができるようにもなりますので、おやつを与えた後等に歯磨きができない場合は、せめてブクブクうがいをするようにしてください。ブクブクうがいや歯磨きは、お風呂の中で練習すればこぼしても大丈夫ですよ!

また、あんよができるようになった子供は好奇心旺盛になりますので、歯ブラシをくわえたまま転んだりブツけたりしないように気をつけてください。この時期に口の中をケガしてしまうと様々な悪影響があります。軽い傷に見えても、数ヶ月後に症状が出る場合もありますので、念のため「かかりつけの歯科医院へ行って、しっかり診察してもらいましょう。

ワンポイントアドバイス

子供の頃から通いやすく、何でも相談できる「かかつけの歯科医院」を持つことはお口の中の健康を保つ上で大変重要です。痛い部分がなくても、お買い物感覚で歯科医院へ通い歯科医院の常連さんになりましょう。

3〜6歳

乳歯が生え揃うこの時期に、子ども自身でしっかり磨けるように指導し、歯磨きを習慣化していきましょう。

乳歯20本が生え揃うこの時期(この時すでに乳歯の下には永久歯がアゴの中に出来上がっています!)、実はむし歯が出来る子どもがとても多いのです。

原因はお菓子の味を覚えてしまうからです。
お菓子がいけないわけではないのですが、時間と量をきちんと決めて与えることが大切です。また、「可愛い孫」と言って可愛がってくれる「おじいちゃん・おばあちゃん」にもお菓子をあまり与えないように協力してもらうことも大切です。

奥歯・歯と歯の間に特に注意して磨きましょう。子ども自身で磨けるように指導し、たまには「仕上げ磨き」をして一人できちんと磨けているかチェックしましょう。歯間清掃具(デンタルフロス等)を使用すると効果的です。

ワンポイントアドバイス

仕上げ磨きはこんな対策をして試してみましょう

  • 子どもの機嫌のいい時にする
  • お母さんも時間に余裕があるときにする
  • 優しく磨く
  • 歯ブラシは小さめを使用する
  • 歯ブラシは鉛筆を持つように握り、軽く持つ
  • 上の歯を磨くときには上唇を軽く指で持ち上げて磨く
  • 奥歯の外側を磨くときは唇のはしから指を入れて頬を広げて磨く

6〜18歳

児童生徒健康診断表(歯・口)の健診項目に基づいて行われる学校歯科健診で歯の状態を知り、適切なケアをしましょう。

診断手順1:
歯肉の状態 / 歯列・咬合・顎関節の状態 / 歯垢の状態 の診査

歯肉の状態歯肉の炎症(歯肉炎・歯周炎)について診ます

評価0→炎症症状(発赤・腫脹・出血等)がない場合

評価1→軽度の炎症症状がある場合

評価2→相当の炎症症状がある場合

歯列・咬合・顎関節の状態歯並び、かみ合わせ、顎の関節等について診ます。

評価0→異常なし

評価1→定期的な観察を要する場合

評価2→より専門的な診査が必要な場合

歯垢の状態歯垢(プラーク)の付着の程度について診ます

評価0→ほとんど歯垢が付着していない場合

評価1→歯面の3分の1以下に付着が見られる場合

評価2→歯面の3分の2以上に付着が見られる場合

上記評価は健診後の対応に反映されます。

評価0→異常なし→現状では健康が維持されている

評価1→要経過観察→指導及び定期的な観察が必要

評価2→要受診→歯科医による専門的な診査、指導が必要

診断手順2:歯牙の診査

歯肉の状態歯牙全てを確認し、う蝕(虫歯)の有無、処置の有無等について診ます

未処置歯→う蝕が見られる歯※

処置歯→う蝕(またはその他)のための処置が完了している歯

喪失歯→何らかの理由により抜歯となった歯

要注意乳歯→永久歯の萌出に妨げとなるなど、保存の適否を考慮すべき乳歯

要観察歯→ごく初期のう蝕が疑われ、経過観察が必要な歯

※現在歯、治療に必要なう蝕が認められた未処置歯を一括して(C)と取り扱う。以前のように程度によってC1~C4と分類していません。

CO、C、GOについて

CO(要観察歯)とは
視診ではう蝕と判断できないが、着色・白斑など、う蝕の初期病変の疑いがある歯のことを言います。
CO(要観察歯)は適切な指導を行うことにより、むし歯への移行を遅らせたり、健全な状態への回復が期待できる段階の歯です。治療勧告の対象とはなりませんが、そのまま放置すると、う蝕に進行する可能性がとても高いので、その後の定期的な観察やブラッシング指導などを行う必要があります。COのうちに対策を!
C(未処置歯)とは
直ちに治療を必要とする状態の歯のことを言います。
過去に治療した歯でも新たなう蝕が認められる場合(二次う蝕)もあります。また、現在治療中の歯も健診時点では治療が終了していないということで未処置歯として判定されます。
GO(歯周疾患要観察者)とは
  1. 歯肉に軽度の炎症症状が認められるが、健康な歯肉の部分も認められる
  2. 歯垢の付着は認められるが、歯石の沈着は認められない
  3. ブラッシング指導を行い、注意深く歯磨きを続けて行うことによって炎症症状が消退する歯肉の保有者
以上の場合をGO(歯周疾患用観察者)と言います

医療機関での治療を受けなくても、学校での適切な対応(ブラッシング指導等)によって歯肉の改善が期待できると判断されたもので、治療勧告の対象にはなりません。

正しいケアのポイント

歯磨き(ブラッシング)
歯磨きをしなければならない部分は「歯の表側と裏側と隣接歯面(歯と歯の間)です。歯の種類によっては違った凸凹があるので、歯ブラシがあたりやすい「磨きやすい部分」とあたりにくい「磨きにくい部分」があります。
  • グリップ持ち(左)と鉛筆持ち(右)がありますが、きちんと磨ければどちらでも構いません。

  • 奥歯は歯ブラシを斜めに入れます。

  • [バス法]
    歯ブラシの毛先と歯と歯肉の境目に45℃の角度にあてて、軽く小刻みに動かして磨きます

  • [スクラビング法]
    歯ブラシの毛先を直角にあてて軽く小刻みに動かして磨きます。歯の内側は45℃にあてて磨きます。

歯間ケア
隣接歯面では歯ブラシの毛先が特にあたりにくいので、デンタルフロスや歯間ブラシ等の歯間清掃具を用いるとよいでしょう。
  • フロスは、30cm程度に切って両端を中指に巻きつける。

  • 前後に3~4回こすりながら引き上げる。

  • 歯間ブラシは、歯肉を傷つけないよう、歯と歯肉の境目にブラシをあて、前後にゆっくり数回動かす。

  • 自分の歯の隙間にあった大きさの歯間ブラシを選ぶことが重要。「きつめ」よりも「ゆるめ」を選ぶのがポイントです。

フッ素塗布
歯の表面の歯質を強くする「むし歯予防薬」のフッ素を塗布して、う蝕を予防しましょう。
フッ素はむし歯になりかかっている歯の再石灰化(治す働き)を促進します。フッ素塗布は乳歯の前歯が生える1歳頃から定期的に継続して受けることが大切です。
  • 家庭でやる方法

    歯磨き:フッ素は低濃度でも継続して摂ることが大切です。歯磨き剤をつけずに磨いた後に、「フッ素入り歯磨き剤」を使ってもう一度磨きます。仕上げにフッ素の洗口剤やジェル、スプレー等を使用することもおすすめいたします。

    うがい:「フッ素入りのうがい液」でうがいをしフッ素洗口をしましょう。
    これはうがいが上手に出来る4歳頃から永久歯が生え揃う中学生頃まで行うとよいでしょう。

  • 歯科医院でやる方法

    保健所や「かかりつけの歯科医院」で相談してください。
    歯科医院で「フッ素塗布」を行う場合には必ず「プラーク」を除去してから行います。しかも高濃度のフッ素を塗布します。方法は綿球や歯ブラシで歯に直接薬を塗布する方法と、歯にトレーをかませる方法が一般的です。やはり一番いいのは歯科医院で定期的(半年に一度)にフッ素塗布を行うことです。フッ素は「予防のプロ」に塗ってもらいましょう!

※効果を最大限に発揮するために、いずれかの方法でフッ素を塗った後30分間はうがいや飲食を避けてください。

成人

20才を過ぎたら歯周病も要注意!規則正しい生活とバランスのとれた食生活を意識して、健康な歯を保つための予防をしましょう。

定期検診・成人歯科健診
歯を失う2大原因は「むし歯」と「歯周病」です。「むし歯」は“歯そのものの病気”ですが、「歯周病」は“歯ぐきと歯の周りの組織は破壊される病気です。初期状態を「歯肉炎」、悪化した状態を「歯周炎」と呼んでいます。これらを総称したものが「歯周病」です。

歯周病の主な原因として以下などが考えられます

  • 歯垢(プラーク)や歯石

    歯垢とは歯の表面につくやわらかい汚れ。歯石とは歯垢にカルシウム等が付着したもの。

  • 歯並びの悪さ

    歯並びが悪いとブラッシングが不十分になり、歯垢がたまることで炎症が起こしやすくなる。また、歯が抜けたのにそのままにしておくと、残された歯への負担が大きくなって歯肉を痛める原因となる。

  • 悪習慣

    鼻が悪かったり、歯並びが悪いため口呼吸となり、口の中が乾燥しやすくなって歯垢が付着する。歯は横からの力には弱いため、歯ぎしりも歯周病になる原因の一つ。

大切な歯を守るためには、何と言っても毎日のブラッシングが一番です。
しかし、いくら一生懸命ブラッシングをしても歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目についた汚れが全てとれていない限りむし歯ができてしまいます。仕事が忙しいからといって、ほったらかしにはせずに、気になるところがなくても、自分のブラッシングがきちんとできているかを確認する意味でも、半年に一度は歯科医院へ定期健診へ行きましょう。

市町村によっては基本健診と一緒に受けられるところもあります。詳細は各市町村へお問い合わせください。むし歯がない時に歯科医院へ行くと、全く痛い事はなく、逆に磨き残しを綺麗にしてくれるので、とても気持ちがいいんですよ。

「かかりつけの歯科医院」を持ち、医師とのよい関係を作り、定期健診で日頃から疑問に思ったことは何でも相談できるようにしましょう。

ワンポイントアドバイス

歯周病を悪化させないためには生活習慣の改善をしましょう

  • お菓子や清涼飲料水など、糖分(砂糖)をとり過ぎない
  • プラーク予防に歯ごたえのあるものを良く噛んで食べる(顎も鍛えられます!)
  • 喫煙の影響で血流が悪くなり、細菌と戦う働きが悪くなるので、タバコを吸わない

高齢期

一度失った歯は二度と元には戻りません。歯が元気だと体も元気になれます。若いうちから歯の健康に気をつけ、みんなで8020を目指しましょう!

歯を失ってしまうと、食べ物をよく噛まないで飲み込んでしまい、栄養を効率的に吸収することができません。また、食べられる物も限られてしまうので、栄養が偏ってしまいがちです。
また、歯が抜けてしまうと発音もしずらくなったり、歯並びが気になったりして人前に出ることを嫌がる傾向があります。歯がたくさん残っている人は積極的に人前に出てコミュニケーションをはかり、ゴルフやゲートボールができたりして、ストレスもたまりにくいんです。
心身ともにエネルギーを生むためにも歯はとても大切です。

既に20本以上の歯がないからといって諦めてはいけません。 これから努力して1本でも多くの歯を残しましょう。
また、今20本以上の歯があるからといって、安心してはいけません! 歯の有難さや大切さは、なくしてみて初めて分かるんですよ!

8020を目指して「80歳になっても20本以上の歯を残そう」!